2018/08/16 公開
8月15日付 京都新聞夕刊コラム「灯」に、奈良国立博物館で特別公開中の當麻寺本尊「綴織當麻曼陀羅」が紹介されました。
以下、記事より全文引用。
灯
「縦糸と横糸」
織物による仏画を初めて見た。奈良国立博物館の特別展「糸のみほとけ」に出品されている国宝「綴織當麻曼陀羅(つづれおりたいままんだら)」である。極楽浄土をモチーフにした変相図で、4メートル四方の大画面を表した古代の綴れ織りは世界でもまれという。
驚かされるのは制作工程だ。3センチの幅に60本の縦糸を張る、一般的な織りの1.5倍の細やかさ。その縦糸と多色の横糸を編むようにして織り上げる。1日に織るのは3.5センチ四方が限界で、4メートル四方を仕上げるには8年かかると聞いた。
縦糸と横糸が織りなす世界。中島みゆきさんの曲ではないが、曼陀羅を見て、ふと私たちのつながりを思った。
私たちは日々、さまざまな支えによって生きている。自分の力でなしたと思っても、振り返れば多くの人に支えられていたことに気づく。この広がりを「縁の力」と捉え、その意義について仏教学者の佐々木閑さんが本誌コラム「現代のことば」で書いていた。つながりは同じ時を生きる横の関係だけでなく、過去や未来という、縦のつながりもあるだろう。
織物や刺しゅうの仏画は中世以降、故人をしのんで多く作られた。きょうは終戦記念日、お盆。支えられる幾重もの縁に心を寄せたい。
以上。全文引用。